2015.5.20 RELEASE
Bar Music × CORE PORT
Precious Time for 23:00 Later
RPOZ-10010 定価¥2,400 (+税)
選曲:中村智昭 (MUSICAÄNOSSA / Bar Music)
深い夜の、音楽がより心に響く特別な時間へ。
渋谷「バー・ミュージック」とレーベル「コアポート」が全音楽ファンにおくるミッドナイト・ミュージック。
中村さんの選曲には国やジャンルやスタイルを超えたスピリチュアルなサウンドが宿っている。
そういえば、Bar Musicではいつもそんな気高く力強い音楽が心地よく響いている。
柳樂光隆(Jazz The New Chapter)
渋谷の一角で音楽ファンのオアシスとして知られるBar Musicと、新レーベルCORE PORTがコラボレイト。テーマは夜の音楽。日付が変わる直前の落ち着いたひととき、静かなグラデーションの彩りとともに時計の針をいつのまにか明日へとエスコートするようなコンピレイション・アルバム。心地よく熱を帯びるジャズやフォークに、ブラジル、アルゼンチン、フランスといった異なる国々の名演が鮮やかに交錯、さらにはキャロ ル・キングやビリー・ジョエルの絶品カヴァーも収録の全18曲。新たな音楽との出逢いが今日の心を鎮め、やがて明日への希望となる。
コアポート──2014年の東京で産声をあげた新たなレーベルの名は、「その核となる揺るぎない音楽性を有したアーティストや作品が集う港とする」という発足理念に由来する。わずかに一年の履歴においてすでにアメリカ、イギリス、フランス、アルゼンチン、ブラジル、イタリア、ドイツ、カナダ、日本から届いた様々なスタイルの良質な音楽を、僕たちリスナーに紹介している。さらにはフランスの吟遊詩人、ピエール・バルーが60年代から現在に至るまで手掛け続けるレーベル、"サラヴァ"の膨大なカタログを有することも、特色の一つである。
「Bar Musicの23時あたりの雰囲気をイメージしたコンピレイションを、コアポートの音源で」という依頼を頂戴したのは、まだ寒さも厳しい折りの、やはり終電を目の前にしたころだっただろうか。これまでDJの現場やUSENの選曲の中で繰り返しプレイしてきたベッカ・スティーヴンス「Tillery」やジェニフェル・ソウザの「Pedro e Lis」、デビュー時からのファンであるヨーロッパ・ピアニズムの至宝、トリオセンスのライヴ盤の存在もすぐに脳裏を過った。カーメン・ランディの「Grace」に至っては、僕のレーベル"ムジカノッサ・グリプス"からリリース予定のBar Music最新コンピレイションにリストアップしたところで、ライセンスの申請をまさにコアポートにお願いするタイミングでもあった。そうしてヒルデ・ヘフテによるビル・エヴァンス「Children's Playsong」の美しいカヴァーへと最終的に着地するような選曲イメージも、すぐに湧き上がったのだった。何より、おそらく多くのコラボレーションのアイデアがある中で、まっ先にBar Musicを指名してくれたことが嬉しかった。
以前、インタビュー取材の中でBar Musicという場を語るときに、"小舟"をモチーフとしたことがある。豪華客船のような優雅さやスケールの大きさはなくとも、あらかじめ定められた航路はなく、丁寧に風向きと潮の流れを読みながら、日常における小さな感動の刹那に立ち会わせてくれる──。言うならば本コンピレイションCDは、2015年の春にBar Musicがその名もコアポートという港へ寄港した際の、確かな記録というところだろうか。
ご乗船、誠にありがとうございます。時刻は日付をまたぎ、貴方に、深い静寂の刻が訪れようとしています。
2015年 3月 中村 智昭(MUSICAÄNOSSA / Bar Music)
http://www.musicaanossa.com/
真夜中、静かに頭が覚醒していく時間がある。リラックスはしているのだが、ただ弛緩しているのではなく、何ものかに導かれながら自分の中にあるノイズが薄まっていく時間。本来の自分など勿論たいしたものではないが、それでもその本来の自分を取り戻していく貴重な時間だ。そんな時間をたびたび渋谷のBar Musicで経験した。この渋谷の一角にあるお店で、店主の中村さんがセレクトして流れる音はひたすら心地良い。上っ面の心地良さであればそれは通り過ぎていくだけだが、その場と時間をひとつの物語にしてしまうような意志ある選曲によってこのBar Musicという森に包まれていくような快感がある。リラックスしながらも絶妙な刺激があり、細胞をゆっくりと揉みほぐし、この時間帯の覚醒を助長してくれる。
コアポートは「一聴すると心地良いが、その音楽の背景には広大な平野が続いている」という音楽を紹介しようと心掛けている。それは発売される個々の作品によって表現されるべきものだが、レーベルの全体像を端的に提示できないものかと考えた時、Bar Musicで"リラックスしながらも絶妙な刺激"と自分が感じたものが、ひょっとしてどこかでシンクロするのではと思った。それがこのコンピレイションCDの出発点だった。そしてBar Musicにいる真夜中の時間は、それに相応しい音が鳴っている時間だ。
結果的に、中村さんが持つモダンな感覚が濃厚に反映され、レーベルの音源に膨らみを持たせてくれた。収録曲ではル・コックのセレクションに驚いた。サラヴァ・レーベルの2000年代初期、ピエール・バルーの息子バンジャマン・バルーがそのセンスを開花させていた時代の音響感が今に通じると気付かせてくれるかと思えば、ジャック・トリーズのハニーバスの如き田園フォーク的なテイストにはQuiet Cornerとの関連も感じた。アルマディージョのフラメンコ・ギターとネルソン・アンジェロのギターの並びは、大西洋を横断してスペインとブラジルを一線上に見据えたような響きを持つ。そしてアカ・セカ・トリオのハーモニー、クリスティーン・トービンの静謐でいてソウルフルなアイリッシュ・ヴォーカル、ノーマ・ウィンストンの気高い声、いずれも心を鎮めてくれるという意味では同一のスピリチュアルである。多くの視点が混在していながらも、深い夜の時間に向けて全曲が一丸となって穏やかに疾走していく不思議で魅力的なCDに仕上げていただいた。ぜひ真夜中に聴いてみてください。
2015年 3月 髙木洋司 (CORE PORT)