2016.6.22 RELEASE
JAZZ EXTRACT OF SARAVAH
SELECTED BY HIROKO OTSUKA
RPOZ-10024
定価2,400円 (+税)
■選曲:大塚広子
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タワーレコード 購入サイトサラヴァが奏でてきた世界中の原初的な響きとモダンジャズが溶け合うことで、浮かび上がったのはジャズの本質だった。ジャズDJだからこそ描くことができたサラヴァの新しい見取り図だ。
柳樂光隆
(Jazz The New Chapter)
DJ大塚広子とサラヴァ・ジャズのスリリングな交歓。
オリジナリティ溢れるセンスで、ワン&オンリーな"JAZZのグルーヴ"を起こすDJとして活躍する大塚広子がサラヴァ音源をコンパイル!
サラヴァの膨大なカタログの中から、ジャズ的感性溢れるスピリットやエキス(JAZZ EXTRACT)が感じられる音源をDJ大塚広子がセレクト。サラヴァ特有のディープネスとモダンな感覚を手作りコラージュのようにシャッフルし、新しいサラヴァ・ジャズ観を提示した必聴コンピ。世界初CD化3曲、日本初CD化5曲収録。
- ラ・パルク/トリオ・ミシェル・ロック
La parque (Michel Roques – Benoit Charvet) / Trio Michel Roques
from the album "En avant la Zizique – Boris Vian " SH-10002
P 1968
- むこう岸/ピエール・バルー
L'autre rive (Pierre Barouh / Yasuaki Shimizu) / Pierre Barouh
from the album "dites 33 volume 2 " SHL-2102
P 2001
- サンザ・サレ/フィリップ・マテ&ダニエル・ヴァランシアン
Sanza sallée (Phillippe Maté) / Phillippe Maté – Daniel Vallancien
from the album " Maté / Vallancien " SHL-10009
P 1972
- ほらって言ったよね、ほら/ジャック・イジュラン
Tiens j'ai dit tiens (Jacques Higelin) / Jacques Higelin
from the album " Jacques"Crabouif " Higelin" SHL-10020
P 1971
- ル・デニシュール/マジュン
Le dénicheur (Leo Daniderff) / Mahjun
from the album " Mahjun " SH-10040
P 1973
- ブレリアス・エルマノス/アルマディージョ
Bulerias Hermanos (Nino et Nanasso Baliardo) / Armadillo
from the album " Armadillo " 591060
P 1991
- お前の船は出ていった/ミシェル・ビュラー
Ton Bateau est parti (Michel Bühler) / Michel Bühler
from the single HS-400507
P 1971
- 俺の勝手だろ/チック・ストリートマン
Ain't Nobody's Business But My Own (Chic Streetman) / Chic Streetman
from the out-track of album "Growing Up" SH-10055
P 1970
- ダンスのためのレトリスト即興/モーリス・ルメートル &アレスキ
Improvisation lettriste pour danser (Maurice Lemaître)
Maurice Lemaître et Areski
from the album " La lettre et le silence " SH-10027
P 1972
- ムッシュー・チンパンジー/ミシェル・ロック
Monsieur chimpanze (Nicole Roques – Michel Roques) / Michel Roques
from the album "Chorus " SH-10030
P 1970
- レ・ロジュ・デュ・T.P.F./トリオ・ミシェル・ロック
Les loges du T.P.F. (Michel Roques) / Trio Michel Roques
from the album " En avant la Zizique – Boris Vian " SH-10002
P 1968
- フィリー/ジョルジュ・アルバニタ、ミシェル・グレイエ、
ルネ・ユルトルジェ、モーリス・ヴァンデ
Philly (Maurice Vander) / Georges Arvanitas, Michel Graillier,
René Urtreger, Maurice Vander
from the album " Piano Puzzle " SH-10011
P 1970
- バイ・バイ・ベルヴィル/カルテット・エラン
Bye Bye Belleville (Andrew Crocker) / Quartet Elan
from the album " Live " SHL-2086
P 1997
- グアンタナメラ/レオ・ブローウェル
Guantanamera (José Marti - Joseito Fernández) / Leo Brouwer
from the single " Bande originale du film - Lucia" SH-30003
P 1969
- 宴の終わり/ピエール・バルー
Sortie du bal (Pierre Barouh) / Pierre Barouh
from the album " Le grenier de Saravah Vol.1 "
P 2002
- アコーディオン/ダニエル・ミル & ピエール・バルー
Accordéon (Text; Pierre Barouh et Allain Leprest
Jean Sébastien Bach ) / Daniel Mille et Pierre Barouh
from the album " Le funambule" SHL-2096
P1999
- バッサンの馬鹿ども/ダニエル・ミル
Les fous de Bassan (Daniel Mille) / Daniel Mille
from the album " Le funambule" SHL-2096
P1999
- マリア・カンディダ/マス・トリオ
Maria Candida (Jean-Pierre Mas) / Mas Trio
from the album " Waiting For The Moon " SHL-2092
P1998
- 自分でイライラしている/ル・コック
J'm'énerve tout seul (Martineau – le coq) / le coq
from the album " Tête de gondole " SHL-2120
P 2005
- 精神的な面接/ジェラール・アンサロニ
L'entretien spirituel (Gérard Ansaloni) / Gérard Ansaloni
from the album "La mort de la vierge " SHL-2109
P 2002
- ピフ/アレスキ
Pif (Brigitte Fontaine / Areski Belkacem) / Brigitte Fontaine et Areski
from the album "Brigitte Fontaine-Areski
Les églantines sont peut-être formidables" RSL-1081
P 1980
※世界初CD化 M-3, 7, 9
※日本初CD化 M-1, 5, 13, 19, 20
私が初めて聴いたサラヴァ・レーベルの音楽は、「Le Trio Camara」 だったと記憶する。ジャズサンバの良作として知られる内容だが、フランスに残されたこのブラジルの音楽は、本国の数あるそれらの作品とはどこか違った謎めいた雰囲気があり、音楽性よりも'異国に残された謎の音の痕跡'といった存在に惹かれ、いつか手にできたら・・・と思っていた。
次に出会ったのは、「Barney Wilen / Moshi」。アフリカのフィールド・レコーディングを自己の音楽に落とし込んだ内容で、そこには、部族のチャント、村の人々の喧騒や犬の声などが収められ、人と自然の息遣いが感じられる。後にジャズを聴くようになってからバルネ・ウィランは、マイルス・デイヴィスとの競演で知られるモダンジャズ界の人気テナー奏者だと知り、この作品とのイメージのギャップに驚いた。フランスのジャズマンが、アフリカという国に抱いた純粋で異常な好奇心が反映されているようで、なおさら興味を惹かれた。
どちらもジャズのなかに、異国感がもたらす価値観のよじれのようなものがあって、そのちぐはぐさが私にとっては珍奇で魅力的だった。
他にも、Gabriel Yaredの映画音楽や「Nana, Nelson Angelo, Novelli」「Michel Roques / Chorus」など好みのサラヴァ・コレクションも増えていき、 2010年12月にオープンしたサラヴァ直営のライヴハウス、サラヴァ東京で、大河内善宏氏がキュレーションするイベントでのDJを共にしながら、より深いサラヴァ音源や、アツコバルー氏が継承するサラヴァの文化的な側面を教えてもらった。一つの音楽レーベルとしてだけでなく、人の目と目、手と手を合わせることによって得られる見知らぬ世界との交流の場であることを、身をもって実感した。
今回の選曲は、そんなサラヴァのヒューマニスティックな部分と、異国感ある多種多様な音楽性を反映した。モンマルトルを舞台に、様々な国のテイストを持ったミュージシャンが集うステージ。街の喧騒、動物、子供の声もする。あけっぴろげな人々が交差する混沌を描いてみた。
サラヴァは、まだ見ぬ世界を知りたいという欲求が、ジャンルを超えた豊かな音楽を生むことを一番にわかってくれている。
大塚広子 May.2016
http://djotsuka.com
今回、大塚さんの自由で柔軟な活動を裏打ちしている、"徹底したレコードの音源追求" を垣間見させていただいた。もともとはサラヴァ音源からジャズ的感性溢れるスピリット、またはエキス(JAZZ EXTRACT)が感じられるものを選んでいただくお願いをしたのだが、大塚さんが感じたジャズの領域は想像以上のものだった。50年の歴史がある膨大なサラヴァ音源を有機的、立体的に覚醒させたその技がここには溢れている。
サラヴァのジャズというと、かの名作『SARAVAH JAZZ』(SHL-1069)を思い出す方は多いだろう。チャンピオン・ジャック・デュプリー、バルネ・ウィラン、ナナ・ヴァスコンセロス、スティーヴ・レイシー他が混然一体と迫り、目眩がするような内容。セレクターであるピエール・バルーのジャズへの考え方がわかる編集盤である。並列的なセレクトでなく、雑多で重層的。そのほうが浮かびあがってくるものが全体像として見えてくる好例かもしれない。もちろんザラザラした"ちぐはぐさ"も感じられるが、大塚さんも今回の選曲でそういったものに反応し、着目するあたり、その音楽的な反射神経は極めてサラヴァ的だ。
ここで"ジャズ"としてセレクトされた音。例えば、本来サラヴァ・スタジオのレコーディング・エンジニアであったダニエル・ヴァランシアンが楽器のように卓を操り、ダブ・ミュージックのごとき音の絵巻を作り上げた斬新なM-3。70年代フレンチ・プログレ・バンド、マジュンによる -古きガンゲットの一場面のような- ミュゼットM-5。ベルンのSSWミシェル・ビューラーのM-7で聴ける一途なフルートとグルーヴ。レトリスム運動の主要人物モーリス・ルメートルによるアナーキーな言葉の解体ぶり、そこに終始感のないアフロ的なパーカッションを叩くアレスキが加わってこそ凄味が増したM-9。ポップな旋律ながらフランス中世の12音節詩のフォームで朗読するジェラール・アンサロニのM-20(詩人としてのピエール・バルーは彼のことを「生まれてから聴いた中で最も美しい音楽」と評した)。たしかにこれらを集合体として聴くとジャズの原液のようなものが感じられる。
そのエキスは、実はサラヴァのアティテュードそのものであり、そこに大塚さんが共鳴し、約75分の収録時間の中にその交歓の連続がしっかり記録されている。
髙木洋司 (CORE PORT)