2018.2.7. RELEASE
ウォルター・スミス3世 |
トリオ
WALTER SMITH III |
TRIO
RPOZ-10039
定価2,400円 (+税)
解説:柳樂光隆 (Jazz The New Chapter)
この10年間、常にシーンの先端にいるウォルター・スミス3世が、遂に念願のトリオ編成による最新アルバムを完成。スペシャル・ゲストとしてジョシュア・レッドマン(ts)、クリスチャン・マクブライド(b)が参加した強力盤。
■2006年のデビュー作以来、現代ジャズ・シーンのトップレベルで活躍しているミュージシャンたちと何度も共演を重ね、既に4枚のアルバムをリリース。さらに2013年にはクリスチャン・スコット(tp)、ジェラルド・クレイトン(p)、ローガン・リチャードソン(as)他とのスペシャル・プロジェクト「ネクスト・コレクティヴ」にも参加、まさにシーンの先端にして中心にい続けるサックス奏者ウォルター・スミス3世、待望の最新作。
■過去作はロバート・グラスパー、ジェイソン・モラン、テイラー・アイグスティ等のピアニストに加えてアンプローズ・アキンムシーレ(tp)、マシュー・スティーヴンス(g)などが参加していたが、デビュー時から自身が取り組みたかったトリオ編成によるオリジナル・アルバムがようやく実現。メンバーは旧知のハリシュ・ラジャン(b)とエリック・ハーランド(ds)。さらにスペシャル・ゲストには敬愛するジョシュア・レッドマン(ts)、クリスチャン・マクブライド(b)というビッグネームが参加。
■マシュー・スティーヴンスが入った前作『Still Casual』のティピカルな2010年代型ジャズの感覚を、ストレート・アヘッドな伝統的サウンドを纏いながら表現した力作。ウォルターが聴くことも演奏することも好きなスタンダード曲をシンプルに、オーヴァープレイにならないように演奏することに努めたという作品。現代アーティストが最新の演奏スキルで、伝統としっかり繋がっていることを証明した意義ある作品といえる。アルバム原題は「TWIO」で、これは「TRIO」の発音を半分ジョークと共に表したもの。
01. アスク・ミー・ナウ
Ask Me Now (Thelonious Monk)
02. ノーバディ・エルス・バット・ミー
Nobody Else But Me (Jerome Kern)
03. オン・ザ・トレイル
On The Trail (Ferde Grofe)
04. ウイル・ビー・トゥゲザー・アゲイン
We’ll Be Together Again (Carl Fischer)
05. アイル・ビー・シーイング・ユー
I’ll Be Seeing You (Sammy Fain)
06. アダムズ・アップル
Adam’s Applle (Wayne Shorter)
07. ザ・ピーコックス
The Peacocks (James Rowles)
08. ソーシャル・コール
Social Call (Gigi Gryce)
09. コントラファクト
Contrafact (Walter Smith III)
■2017年録音
ウォルター・スミス3世 (ts)
ハリシュ・ラジャン(b) M-1,2,6,7
エリック・ハーランド(ds)
※スペシャル・ゲスト
ジョシュア・レッドマン(ts) M-3,9
クリスチャン・マクブライド(b) M-3,5,8,9
WALTER SMITH III (ts)
HARISH RAGHAVAN (b) M-1,2,6,7
ERIC HARLAND (ds)
Special Guests
JOSHUA REDMAN (ts) M-3,9
CHRISTIAN McBRIDE (b) M-3,5,8,9
《ウォルター・スミス3世、最新作『トリオ』を語る》
【アルバム制作にいたるまでの経緯】
私は長い間、トリオ編成のプロジェクトが実現することを望んでいた。何しろ私が好きなレコードは「ジョン・コルトレーン/ラッシュ・ライフ」のトリオ編成曲、「ソニー・ロリンズ/フリーダム・スイーツ」「ウェイ・アウト・ウエスト」、「ケニー・ギャレット/トリオロジー」「ブランフォード・マルサリス/ダーク・キーズ」「トリオ・ジーピー」といったところなんだ。私はこれらの音楽を愛しながら成長していき、何年にもわたってスタンダード曲を学び、このような音楽を自分のキャリアの中で数多く演奏することを思い描いていた。しかし、実際は何年も多くのアーティスト、例えばテレンス・ブランチャードやアンブローズ・アキンムシーレ、ジェイソン・モラン、エリック・ハーランド等の共演者として演奏しており、ツアーやレコーディングの場でスタンダード演奏はほとんどしていなかった。私自身のグループについては、常にサックス・トリオでスタンダード演奏にのめりこみたかったが、実際はピアニスかギタリストが入っていて、リーダーとしての立場では、それを前提にした作曲が多かった。今回のプロジェクトは、自分がスタンダード・レパートリーを解釈することに集中できた新しい出発のアルバムだ。
【アルバムの方向性の決定】
制作前の段階では、演奏曲をセレクトした後に多くの時間をアレンジメントとリ・ハーモナイズに費やした。この過程を通じて、好きなアイデアをいくつも思いつき、さらに掘り下げていったが、やがて私はプロジェクトの本質から離れ始めている自分に気が付いた。そして、どのように元歌を表現するべきかということについてシンプルに考えるようにした結果、すべての作業を中止した。もともと曲を選んだ時、自分が好きな「メロディ」を選んだということが重要だった。つまりミュージシャンによるオーヴァープレイがされないこと、これが私にとってとても大事なことだったんだ。最終的に、このアルバムは私が望んでいた、古いレコードによくある何かしらの緩いウァイヴというものが、溢れ出ていると思う。
【アルバム・タイトル『TWIO』の意味について】
「TRIO」という言葉の英語の発音は、なんか「TWIO」って聞こえる時があるでしょ?私の人生は、たいていがジョークに包まれているみたいだ(笑)。
【レコーディング・メンバーについて】
■ハリシュ・ラジャン(b) :
ハリシュは数多くのツアー・メンバーとして一緒に演奏してきた仲だ。エリック・ハーランドのヴォイジャー、アンブローズ・アキンムシーケ・クインテット、その他もう数え切れない。ここ数年間で本当に多くの時間を彼と過ごしてきた。彼の演奏はエネルギーに満ち溢れ、空間とハーモニーの方向性を独特のアプローチで埋めてくれる。彼のタイム・センスは本当に欠点が見当たらないよ。
■エリック・ハーランド(ds) :
エリックもまた、過去何年もの間、いっしょに演奏を共にしている。彼と演奏するといつも楽で、自然な気持ちでいられる。禅みたいにね。彼はこの世界で多くのことを達成したミュージシャンで、サウンドをどんな状況でも強化し、聴き手をエキサイティグにする方法を持っている。そして陽気な人間で、すべての局面で周囲を快適にしてくれるんだ。
■クリスチャン・マクブライド(b) :
クリスチャンの音楽を聴いて育った私だから、彼のグループで何年か一緒に演奏する機会を得られたのは本当に名誉なことだった。数多くのミュージシャンから求められ、最も成功したベース・プレイヤーだと思う。私は彼のグルーブで初めて演奏した時のことをまだ覚えているよ。ベース・プレイヤーとしての的確さ、スピード、綺麗な音、すべてに圧倒された。あのシングル・ノートは一緒に演奏していて凄すぎる。
■ジョシュア・レッドマン(ts) :
ジョシュアはサックス奏者としての私の最初のヒーローだ。私をプロのサックス奏者にしてくれる原動力だった。彼の音楽を聴いて、その演奏とスタイルには本当に心奪われた。そうしているうちに、コンサートやフェスのバックステージで彼に合うことが出来たことは、本当に予想もしなかった。そしていっしょに演奏したり録音する機会があればいいね、と何度も話し合ったんだ。だからこのアルバムでそれが実現したことは本当に嬉しい。夢がかなったんだよ。
【ジャズとそれ以外でのジャンルで好きなアルバム】
もちろんたくさんあるけど、敢えていえばこんな感じかな。
「Ornette Coleman - Something Else!」
「Joshua Redman – Moodswing」
「Kenny Garrett – Songbook」
「John Coltrane – Crescent」
「Logan Richardson - Ethos」
「Sam Rivers - Contours」
「Mark Turner - In This World」
「Joe Lovano - Quartets: Live at the Village Vanguard」
「Becca Stevens - Weightless」
「Taylor Eigsti - Daylight at Midnight」
「Ben Wendel - Simple Song」
「Radiohead - Kid A」
「The Roots - Things Fall Apart」
「Common - Like Water for Chocolate」
「The Beatles - White Album」
「D'Angelo - Voodoo」
「Imogene Heap - Speak for Yourself」
「Jay - Z - Blueprint」
文責:コアポート